ドメーヌ・ポンソは、1872年、モレ・サン・ドニにあるワイナリーをウィリアム・ポンソ氏が買い取ったことに端を発するドメーヌ。1932年には当時まだブルゴーニュでは珍しかったドメーヌ元詰めをいち早く始めた先駆け的存在として一目を置かれ、3代目となるジャン・マリー氏は、最大の所有であるクロ・ド・ラ・ロッシュの畑からマサル・セレクションによって、現在のブルゴーニュの畑の大半で使われる高品質なクローンを選抜。これが現在ブルゴーニュで広く用いられているディジョン・クローンの113、114、115、667などで、ブルゴーニュで栽培される80%のピノ・ノワールはポンソに起源を持つと言われています。
1981年からはジャン・マリー氏の息子ローラン氏がドメーヌを運営。彼は温度センサー付きラベルや独自に開発した合成コルクの採用、雹害防止ロケットの使用など、革新的な技術を取り入れ、ワインの品質を向上させます。また、偽造ワインの摘発にも注力し、ワインケースの温度や保管状況をモニターするインテリジェント・ケースやICタグを利用し、ボトルの真正性やトレイサビリティを確保しました。ローラン氏は2017年に息子と共に新たなネゴシアン「ローラン・ポンソ」を立ち上げドメーヌを去りましたが、現在も彼の妹ロゼ・マリー女史(写真)が中心となり、代々受け継がれてきたポンソのスタイルを維持し続けています。
ドメーヌ・ポンソの魅力は何と言っても所有する畑の数々。設立当初からクロ・ド・ラ・ロッシュに加えて、クロ・サン・ドニ、シャルム・シャンベルタン、クロ・ド・ヴージョといった、珠玉の特級畑を所有し、2009年にはコルトン、コルトン・シャルルマーニュ、コルトン・ブレッサンド、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ、2010年にはモンラッシェを新たにリリースし、そのラインナップはさらに豪華なものとなっています。
また、モレ・サン・ドニにある幻のキュヴェ、「モン・リュイザン」を造っていることでも有名です。モン・リュイザンとは、アリゴテ80%以上で極少量のみ造られる貴重な白ワインであり、コート・ドールで唯一、アリゴテを使うことを許されているプルミエ・クリュ。畑の斜面上部にある1911年から大切に守られてきた古樹のアリゴテから造られるワインは、通常のアリゴテのイメージとはかけ離れた、複雑で深みのある味わいが特徴です。
こうした珠玉のラインナップや高い品質から、2017年には英国の高級ワインプラットフォームLiv-exの「パワー100」において6位、ブルゴーニュではDRCに次いでの2位を獲得しました。この「パワー100」とは、その年に取り引きされたワインをブランドでグループ化し、価格、取り引きの実績、数量、平均価格などに基づいて定めたランキング。ボルドーの第一級シャトーを初めとする最高峰ワイナリーがトップに名を連ねるこのランキングにおいて、見事6位を獲得したドメーヌ・ポンソはまさにブルゴーニュ最高峰の造り手と言っても過言ではありません。
ポンソが最も大切にしていることは、デリケートさ、エレガンス、フィネスの表現。それを実践するために、栽培に関しては自然派ワインというジャンルが生まれるはるか前の1977年から、化学薬品を使用せずビオロジックともビオディナミとも異なるアプローチの自然栽培を行ってきました。グリーン・ハーベストに頼らない剪定による収量制限も行っており、収穫量は15hl/haと超低収量。これは、ロマネ・コンティの収量を下回る少なさです。収穫はコート・ド・ニュイで最も遅く、全て手作業によって収穫し、選果は必ずブドウ畑で行います。
醸造に関しては「決まりのないことが決まり」というスタイル。ヴィンテージごとにブドウの状態は異なるため、除梗の実施有無、ピジャージュの頻度など、その年に応じて最良の方法を選択しています。熟成には、古樽を使用。新樽では木目が粗く熟成の進行が早いため、最低でも5年以上経った樽を使用し、30ヵ月という長期熟成を基本とします。またSO2の不使用も以前から実施しています。こうした地道な作業から生まれるワインは、ブドウ本来のエキスと旨みが強く、透明感のある仕上がり。このピュアな味わいがポンソの最大の魅力なのです。